管理栄養学科学科ニュース

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慢性炎症を起こした肝臓で、発がん物質の作用が弱まる可能性を発見 ~薬物代謝酵素 CYP2E1 の低下と肝がん発生抑制の関連を示唆~

2026.04.27 ゼミ

論文概要

肝臓は、体内に取り込まれた薬物や化学物質を分解・処理する重要な役割を担っています。その一方で、一部の化学物質は、肝臓で代謝される過程で、かえって毒性や発がん性をもつ形へと変化することがあります。発がん物質として知られる ジエチルニトロソアミン(DEN) はその一例であり、肝臓に存在する酵素Cytochrome P450 2E1(CYP2E1)によって活性化されることが知られています。

本研究では、慢性肝炎および肝線維化を自然に生じる特殊なマウスを用いて、炎症と肝発がんとの関係について解析を行いました。一般に、慢性炎症は発がんを促進する要因の一つと考えられていますが、今回の解析では、強い炎症が認められるにもかかわらず、DEN による肝がんの発生が抑えられていました。

さらに検討を進めた結果、このマウスではCYP2E1 をはじめとする薬物代謝酵素群の発現が低下しており、DEN が活性化されにくい状態にあることが示されました。加えて、DEN 投与後にみられる DNA 損傷や細胞ストレス応答も軽減していました。これらの知見は、慢性炎症によって肝臓の代謝機能が変化し、そのことが発がんの初期段階に影響を及ぼしている可能性を示すものです。

炎症は一般に、がんの危険因子として理解されています。しかし本研究は、炎症が常に一方向に発がんを促進するのではなく、肝臓の代謝機能の変化を介して、発がんの成立に複雑な影響を及ぼし得ることを示しました。今後、炎症と代謝の関係についてさらに理解を深めることで、肝疾患の病態解明や、新たな予防・治療戦略の構築につながることが期待されます。

論文題目
Inflammation-Driven Downregulation of CYP2E1 Is Associated with Attenuated Diethylnitrosamine (DEN)-Induced Hepatocarcinogenesis

掲載誌
Cells 2026, 15(6), 546
Topic: Signaling Pathways in Liver Disease 2nd Edition
https://doi.org/10.3390/cells15060546

著者
土谷 佳弘(広島女学院大学人間生活学部管理栄養学科)

外丸 裕介(広島大学自然科学研究支援開発センター)

金井 昭憲(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

前田 慎(横浜市立大学医学部消化器内科学)

鎌田 英明(広島大学大学院医系科学研究科)