誰もが「その人らしい」暮らしができる地域づくりをめざして ~管理栄養学会講演会の記録~
2022.07.13 管理栄養学会
広島女学院大学の管理栄養学科では「管理栄養学会」という組織をもち、学生の活動支援や学術講演会を開催しています。今年度は、本学科OGである管理栄養士の増井 祥子先生(医療法人恵正会)をお招きして7月6日に『二宮内科の管理栄養士の業務と役割 ~フードバンク活動を通して見えてきたこと~』という演題で講演していただきました。
なお、当日は、本学科同窓生の会である「アイリス食の会」の第29回研修会も兼ねて、オンラインを活用したハイブリッド型にて開催されました。
講演会ではまず、管理栄養学会長の石長先生から開会挨拶があり、新学会長の妻木先生から増井祥子先生の紹介がありました。その後、講演が始まりました。
学科学生と同窓生は、上の写真の3教室とオンラインとで聴講しました。
お話では、医療法人の中での管理栄養士としての仕事への関わり方(栄養管理、栄養管理計画書、食事に関する情報提供書、NST、食事・調理指導、献立作成など)に始まり、CSR(企業の社会的責任:企業が社会で存続するために利益を追求するだけでなく、社会の一員として社会的責任を果たすこと)や、ヘルスリテラシー(健康や病気の情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力のこと)について、まず述べられました。
また、行政、民間企業とNPOやNGOの違いや、フードバンク活動(食品関連企業や農家、個人の方々から余剰食品を寄贈していただき、それを主に生活に困窮している人々を支援しているグループに分配する活動)についてお話しいただき、社会に貢献する管理栄養士について、大きな示唆をいただきました。
増井先生が携わっておられるフードバンク事業の『あいあいねっと』では、「食」を仲立ちとして人と人との縁を結び、地域社会の人々の生活を支える活動を推進されており、あわせて、地域の人々が安心して暮らすことのできる心豊かな地域づくりをめざされているそうです。
『あいあいねっと』の活動は、人々の心や経済状態を含めての総合的な栄養サポートが病院での栄養相談だけでは難しいとの思いがあり、始まったそうです。栄養相談によって栄養の摂り方はわかっても、家族に経済的な負担をしいてまで望むことはしたくない、という高齢者の方々もいらっしゃるそうです。住み慣れた地域で、その人らしく安心して暮らせる地域づくりをするためには、「食」と「居場所作り」は欠かせない、との思いで、これらの活動はなされています。
フードバンク活動は
① 食品企業から食品が寄贈される
② 食品の点検・整理・仕分け
③ 食品を必要とする団体に引き渡す
④ 各団体で調理して食べる
からなりますが、寄贈される食品についても紹介されました。
七夕などの時期の過ぎた季節商品や、育ちすぎた作物、飾り切り野菜の残りの部分、納品期限が過ぎた備蓄食料、コロナの影響で使われなかった食べ物など、『まだ食べられるはずだったのに捨てられてしまう食品群』が紹介され、その種類の多さに、聴いている私たちも、目から鱗がおちる思いでした。経済的に生活が苦しい人々がいる一方で、用途を見いだせずにただ廃棄される食料が膨大にあるのです。ここをつなぐのが『フードバンク活動』ということになるわけです。
活動支援団体には、食品メーカーのほか、物流、店舗、IT関係、文具店、電力会社、衛生管理会社、運送会社、医療法人、社会福祉法人の各団体が、食品活用団体には、路上生活者支援団体、青少年自立支援団体、障がい者支援団体、高齢者支援団体、地域の社会福祉協議会、高齢者生き生きサロン、母子支援センター、父子家庭ネットワーク、反貧困ネットワーク、地域・こども食堂などがあるそうです。
みんなで支えあって、もっと元気な地域を創るため、多くの団体の方々が活動を支援してくださっています。
その後、食品ロスの現状ほか、多くの視点からのお話がありました。
大切な食べ物を捨てずに生かすこと、食べ物は自然の恵みであること、食べ物は命そのものであること、食べ物を無駄にしないこと、食べ物は食べるためにあること、をあらためて思い直す時間となりました。
食を通して地域の人々、地域資源をつなぎ、誰もが「その人らしい」暮らしができる地域づくりに貢献する、それを地域の管理栄養士としてめざされているとのことでした。
この講演会では、会場の皆が元気をいただきました。
増井祥子先生が益々お元気でご活躍されることをお祈りしております。