NGO ワールド・ビジョン・ジャパン(以下WVJ)と本学の提携プログラムであるカンボジア・スタディツアー2019が、2月21日~27日の一週間の日程で行われました。
この研修は、WVJのスタッフに同行いただき、WVがカンボジアで行っている国際支援活動の現場に赴き、支援のあり方やスタッフの国際協力への想いに直接触れます。また、FIDR(国際開発救援財団)の事務所訪問やFIDRが長年支援した国立小児病院での給食事業を見学します。
視察の合間には、アンコール・ワットやアンコール・トムといったカンボジアを代表する遺跡群を観光し、さらに、ポルポト政権下で行われた虐殺の爪痕を刻むキリングフィールドやトゥールスレン博物館を訪れます。
本学の湊学長が、長年WVJとFIDRの理事であり、特にWVは国際理事として直接、開発途上国支援に関わった経緯から、本学学生にも国際支援の現場をぜひ共有してほしいと願い、WVJに協力を依頼して実現したプログラムです。
引率は、本学の澤村先生とWVJの加藤さんです。加藤さんは、WVJ入職前、今回の旅行の手配をしてくださったHISの勤務経験があり、また東京女子大のご出身ということで、湊学長ともつながりがある、まさに今回のツアーの引率者として最適な方でした。国際協力への熱い想いや、一人の人に向き合う誠実な姿勢、親しみやすいお人柄は、研修期間を通じて学生たちの指導者であると同時にお姉さん的存在でもありました。
このたびは、国際英語学科、国際教養学科、管理栄養学科、児童教育学科、幼児教育心理学科から9名の学生が参加しました。それぞれが自分の学びと照らし合わせ、さまざまな視点でこのたびの研修を捉えていました。旅の様子を4回にわけて紹介します。
トモ・プオ地域におけるWV地域開発プログラム視察
2月21日、一行は広島を出発し、ベトナム・ハノイを経由し、カンボジア・シェムリアップに到着しました。なんと入国審査に2時間もかかってしまい、一同ヘトヘトになりました。ガイドのペン・ホーさんには、到着を辛抱強く待っていただきました。
2月22日
研修最初の訪問は、ワールド・ビジョン・カンボジア(WVC)の地域開発プログラム(ADP)の視察です。ADPを統括するオフィスで、スタッフの皆さんと顔合わせ、そして、現地でどのような活動が行われているかについて、説明を受けました。
午前中は、WVが支援している小学校を訪問しました。カンボジアの小学校は2部制で、朝の部と午後の部にわかれています。一週間ずつ交代するとのこと。限られたリソースを最大限に活用する工夫なのでしょう。
到着した小学校では、元気な子どもの声が響いています。最初に、校長先生から小学校の現状と課題についてお伺いしました。今の一番の課題、願いは、図書館の建設なのだそうです。子どもたちが自由に本を手にとって読むことのできる環境をつくりたい、という熱い想いを、校長先生は語られました。その後、教室で勉強している様子を見学させていただきました。子どもたちの礼儀正しさが印象的でした。
続いて、ランチタイムには、湊学長がWVを通して支援している女の子と面会しました。女の子も、学生たちもガチガチに緊張してなかなか話がはずみません。しかし、一緒に折り紙にチャレンジしたり、ご飯を食べたりするなかで、徐々に緊張がほぐれていきます。
「学校の先生になりたい」という夢を語ってくれた彼女の目は、まっすぐで、輝いていました。
お腹も心も満たされたあとは、WVが支援する農業組合(AC)の活動を見学しました。
カンボジアでは、農村地域で水道が整備されているところはまだまだ少なく、毎日長い時間をかけて水汲みに出かける必要があり、また、そのように苦労して得た水でも、必ずしも衛生的とは限りません。そこで、住民がお金を出し合って、水道施設を維持・管理する仕組みを、地元の農業組合が作り出し、運営しています。
WVは浄水設備を整えたり、ACの運営を指導・支援したりと、深いかかわりを持っていますが、あくまでコミュニティの主人公は住民自身であることを置き去りにしない関わり方がなされています。そして、ACの中心を担うリーダーは、全員女性であるのも嬉しい驚きでした。男性たちが農作業にでかけている間、農家の「奥さん」であることを超えて、コミュニティ形成の柱として働く女性たちの笑顔が、誇りに満ちてまぶしく見えました。その誇りは、水道事業によって、安全な水を確保し、水汲みの重労働から人々を解放し、さらには管理のための雇用さえ作り出して、コミュニティの維持と発展に貢献していることへの誇りです。
このような素晴らしい水道事業ですが、利用するための初期費用が50$と高く、本当に必要な家庭の中にも利用をためらったり、あきらめたりする家庭があるようです。そういった家庭へのケアについても、コミュニティとして一緒に考えていきたいとの抱負も語られました。
このあと、実際に水道を利用している家庭を訪問し、使い勝手や生活の変化について、生の声を聞くこともできました。
その後、一行は読書クラブ(Reading Camp)へと向かいました。子どもたちの教育やケアのために、完全にボランティアによって運営されている集まりです。日本でいうと学童保育にイメージが近いでしょうか。
WVがスーパーバイザーとなって教育ボランティアたちを訓練し、教育ボランティアたちは誇りと自信と、何よりも子どもたちへの愛情をもって、絵本の読み聞かせやゲームを中心としたアクティビティを行っています。読み聞かせの絵本も、童話だけではなく、環境問題についての啓発を含んだ内容であったり、また、壁にはられている工作物も、子どもの人権をテーマにしたものもあり、興味深い内容でした。
ここでようやく念願の、子どもたちとのふれあいタイム!学生たちはいきいきと、準備してきたゲーム「じゃんけん列車」で盛り上がります。しかし、なんだか子どもたちは戸惑っている様子...。そうです、カンボジアでは内戦でインフラが徹底して破壊されたため、鉄道はないのでした(最近ようやくプノンペンで復活)。そうはいっても、最後には楽しくゲームができました。
交流のあと、教育ボランティアの方たちに質問タイムです。「モチベーションの源はどこにあるのですか?」という学生の質問に、「子どもたちが大好きだから」と答えてくださったボランティアさん、優しく真剣な表情でした。
その後、WVCの事務所に帰り、振り返りの時間を持ちます。たくさんの学びが続いて、しっかり途中で振り返りをもうけないと、せっかく学んだことがこぼれ落ちてしまいそうなほどです。
ここで、学生たちの声を聞いてみたいと思います。
まずは、国際教養学科4年、杉山さんです。
「今日はトモ・プオでワールド・ビジョンが行なっているコミュニティ開発プロジェクトについて学びました。WVではeducation project, child nutrition and wash project, child sponsor management projectを行なっており、その中でも今日は子ども達の識字率の向上を目指すReading Campを見学させて頂きました。このリーディングキャンプでは未就学児から小学生までの子どもを対象に、本を読み内容を理解させたり、遊びを通して話すスキルを身につけさせる活動が行われていました。このキャンプを見学させていただいて一番驚いたのはリーディングキャンプの先生の、キャンプ運営に対してのモチベーションです。このキャンプは毎週日曜日、1時間半行われていますが、先生方はみんな無給で子ども達に教えているのです。カンボジアには幼稚園もなく、ほとんどの子どもの親はタイへ出稼ぎに行ったり農業をしており、子ども達と一緒にいる時間がありません。そこで「字が読めて子どもが好き」という先生方が無給ででも子ども達に教えたいという思いでキャンプをされていました。このお話を聞いて、先生方の子どもが大好きだということ、そしてカンボジアの子ども達の識字率をあげたいという強い願いで運営されているのが素晴らしいなと思いました。」
つぎに、児童教育学科1年、柏木さんです。
「プロジェクトに携わる人たちを見て、生き方に誇りを持ってるように感じました。また、子どもたちと触れあって、私は学ぶ機会があることの大切さを感じました。どの子どもたちもとても生き生きしていました。」
どちらもそれぞれの視点で、大切なことを学んでくれていることが、よく伝わってきます。