さて、今回参加した皆さんは日本人にとってはショッキングな経験をしたそうですが、教えてください。
全員: 「豚が目の前で殺されたこと!」
杉山さん: ある朝まだ眠っていた時、「ギエー!」という動物の叫び声が聞こえてきたんです。「何ごと?」と思ってあわてて外に出たら、2匹の豚が足をひもでくくられていて、現地のYMCAのスタッフが5人がかりでテーブルに押し付けて作業していました。
岡田: ...そしてその日の晩ごはんにその肉が出てきました。日本では「誰か」がその作業をしていて自分が目にすることはまずありませんが、本当はこうやって処分され、自分たちの食事として食卓に上がっているわけです。本当に感謝していただかないといけないと改めて思いました。牛も丸焼きにされているところを見て衝撃的だったけど、食べてみると感動するくらいおいしくて。
山田さん: 本当にそう思います。殺されている場面を見た直後は、「絶対この豚は食べられないなぁ」と思ったけど、本当はこういう過程を経なければ私たちの口に入らないんだ、こうやって生き物の犠牲の上に私たちの食事があるのだと感謝の気持ちを持ちながら食べてみるといつもよりずっとおいしく感じました。
田頭さん: 炊き出しの材料の買い出しに市場に行った時もショックでした。ヤギや豚の頭や家畜の体の一部分が売られていたりして。正直長い時間あの場所にいるのは精神的にきつかったです。でも市場に行ったおかげで現地の人たちの生活を垣間見ることができた気がします。「え~こんなものもたべるの?」なんて思う食材もありましたし、現地で最初に食事をしたとき「大丈夫かな」と不安に思いましたが、日に日に慣れてきておいしくなってきました。
玉田さん: 私も市場はショックでした、売り方も。日本ならお肉も魚もみんなパック入りで売ってますよね。でも現地の売り方はもう生々しくて、匂いもあり、当たり前のようにさばく光景にも驚きました。でも考えてみると、日本でもそういうことは当たり前にされているのに自分たちはまったく想像もしなかったと、考えさせられました。
ありがとうございます。皆さん、さすがにショックを受けたようですね。家畜が処分されなければ私たちもおいしい料理を食べることができない、そんな当たり前のことを改めて感じることができたのは貴重な経験でしたね。ほかに考えさせられたことはありませんか?
岡田さん: ストリートチルドレンや路上生活者のための炊き出し活動をしていると、いろいろ考えさせられました。何日も体を洗っていないような子、服がびりびりに破れている子とか。日本ではちょっと考えられないような光景でした。でもシャボン玉や紙風船や縄跳びで楽しそうに遊んでくれたり、プールで無邪気に遊んでいる姿を見ていて感動を覚えました。
杉山さん: 事前研修でも習ったのですが、あの国の人口の約8割が貧困層であること、私たち日本人がしている生活は「当たり前」のことでは決してないことを思いだしました。私が一番に気になったこと、それはフィリピンのゴミ事情です。道路やいたる所にプラスチックゴミがたくさん捨てられているんです。現地のスタッフをはじめ大人も子どももプラスチックゴミを普通にそのへんに捨てています。食べ終わったプラスチックゴミを山に投げ捨てている人に思い切ってなぜ山に捨てるのか聞いてみました。彼は「大丈夫、すぐに土に戻るし」と答えたのでとても驚きました。誰もゴミはゴミ箱に捨てるという習慣自体がないようなのです。子どものころからしっかり環境教育をしておかないと、将来本当に大変なことになるんじゃないかと思いました。
山田さん: 日本で当たり前に思っていることをもっと感謝しなくてはと思いました。電気やガス、水道が常に快適に使えるのは日本では当たり前のことですが、あの小学校での生活は違いましたから。蛇口やトイレから水が流れるというそのことだけで感動するなんて日本では想像もつきません。
田頭さん: トイレの水は自分で流す、シャワーなし、それに水道の水がいきなり止まる、など信じられないことの連続でした。ものすごく不便だったけど、不思議と楽しかったですね。それから現地の子どもたちが元気で笑顔が素敵だったことも考えさせられました。日本の子どもたちよりはるかに物質的に恵まれていなくて、家の中にはテレビもゲームもないけど、明るくて元気で外で思い切り遊んで笑顔がいっぱいでしたから。
皆さん、ありがとうございました。さて次回はこのたびの経験で自分の中に起きた変化、そしてそれを将来の自分にどう活かしたいかなどについて聞いてみましょう。