人文学部 国際英語学科 ニュース

2021 Thesis Experiences〜2021年度卒業論文を振り返って〜
授業紹介

3月に入り、卒業式のシーズンを迎えました。今回の学科ニュースでは、この春卒業する英語文化コースの2名の学生に卒業論文の執筆を通じて学んだことや、どんな苦労があったのか、どうやってテーマを決めたのかなどを紹介してもらいます。

国際英語学科では、さまざまな社会問題を映画や小説などを通して学び、考えます。2020年5月にアメリカのミネソタ州ミネアポリスで発生した黒人男性を白人警官が死に至らしめた事件は、記憶に新しいと思います。この事件を契機に"Black Lives Matter"(黒人の命は大切)、いわゆる「BLM運動」が活発化し、アメリカ文化を学ぶ学生の卒業論文でも多く取り上げられました。

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M.Kさんは、ディズニーのアニメ映画を題材として人種問題について考察しました。

「私は卒業論文において、19世紀後半から1960年代までアメリカに存在した、一般公共施設を白人用、黒人用に分離するジム・クロウ法により黒人差別が激しかった時代と、ジム・クロウ法が廃止された後の時代である2020年までの黒人差別の違いについて、主にディズニー映画を用いて考察しました。ジム・クロウ法が存在している1941年に公開されたアニメ版『ダンボ』では、黒人をステレオタイプ的に表現したカラスや、白人によってサーカスで労働を強いられる黒人が登場し、黒人差別を直接的に描いていました。」

「しかし、2009年に公開された『プリンセスと魔法のキス』では作品内に登場する人間や生き物達の苦境を通じて、黒人の夢の実現の困難さを描くなど、黒人差別を間接的に描いた場面が多くありました。この違いは、時代や人々の黒人差別に対する考え方の変化により、差別の原因となる黒人のステレオタイプ的キャラクターを使用せず、黒人差別についても直接的に描きすぎないよう配慮するようになったことを学びました。」

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卒業論文の題目は、「今も続くアメリカの黒人差別―南北戦争からBlack Lives Matterまで」

「作品を何度も見返し細かい部分まで深く考察することや、どうしたら自分が思っていることを上手く伝えられるのか、納得するまで何度も文章を書き直したことは苦労したことでもあり、頑張ったことでもあります。しかし、もっと計画的に書き進めていればさらに考察を深められたと後悔しています。後輩の皆さんは、そういった後悔が残らないように計画的に卒業論文を書き進めていってください。時には思い通りに進まず挫けそうになるかもしれませんが、きっと完成した時頑張ってよかったと感じると思います。」

次に、Y.Y.さんは実話をもとにしたアメリカ映画も取り入れて差別問題について掘り下げました。

「さまざまな人種が共存して暮らしているアメリカにおいて依然として存在する人種・性差別について、ディズニー映画やアメリカ映画を用いて、アメリカの歴史と比較しながら論じました。第1章の『ダンボ』では、アニメ版と実写版を比較して1940年代と2010年代のアメリカの時代背景の移り変わりを考察しました。人種差別が浮き彫りとなっているアニメ版と比べ、実写版では経済格差や性差別が取り上げられていることが分かりました。」

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「アメリカ映画から見る人種差別」と題して論文を執筆しました

「第2章の『ラビング~愛という名前のふたり~』では、異人種間結婚が法律で禁じられていた1950年代のアメリカを舞台に愛を貫いて裁判に立ち向かう、白人男性のリチャードと黒人女性のミルドレッドのラビング夫妻の奮闘について考察を行いました。このラビング裁判を通して、アメリカが多様性を認める国に変化していく様子が読み取れます。実際に、アメリカでの異人種間の国際結婚の割合は年々増えています。第3章の『ズートピア』では、男性を連想させる力強い肉食動物と女性を連想させる可愛らしい草食動物の間で巻き起こる差別や偏見について考えました。また、事件を裏で操っていた真犯人は力がないと思われている草食動物の羊であり、視聴者である私たちの中にもある目に見えない差別や偏見も感じさせる映画でした。先入観を振り払い、差別や偏見を乗り越えるウサギのジュディとキツネのニックを通して社会の多様性を認めるよう訴えている映画であることを論じました。」

「第1章から第3章まで、幅広い世代に親しみのあるディズニー映画や、実話を基にしたアメリカ映画を用いることで、私たち視聴者にアメリカで起こる差別が身近なものとして捉えられることがわかるように論じる工夫をしました。私がテーマを決める際に大切にしたことは、興味がある分野であり、自分が楽しみながら学べるテーマであることです。卒業論文は3年生から4年生にかけて、約2年間の時間をかけて取り組んでいくので、テーマ設定をする際にはぜひ時間をかけて何を大切にするか考えてみてください。」

2021年度は新型コロナウイルスの影響も大きく、急遽オンライン授業となり、図書館で調べ物をするのも難しい時期もありましたが、オンラインで閲覧できるウェブ・データベースを利用して参考文献を集めるなど、学生たちはそれぞれ工夫して卒業論文を書き上げることができました。

大学生活の集大成である卒業論文を無事に完成させ、卒業を迎えた皆さん、本当におめでとうございます!

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