10月5日(金)、京都リサーチパークで開催された、産学協同ポスターセッションで、国際教養学科2年生の前川結香さんと平嶋ゆきさんが発表しました。日本を代表する企業の方々と他大学の上級生の中での、プレゼンテーションでした。
前川結香さんの発表題目は、「瀬戸内しまなみ海道の方言のリアル」。この夏の日本語フィールドワークでの実地調査を踏まえての発表です。教科書をはじめとする文献に示されている方言の境界線と、自身の実地踏査によって得た方言分布のデータが異なっていることを、しまなみ海道の地図や実地調査の結果をポスターで示しながら伝えました。4つの島ごとの備後方言と伊予方言の使用状況を示した表が効果的で、これは後の質疑応答の論議につながっていきました。座学のみに終わらず、現地に足を運んで調べ、それを元に自分自身が先行研究に照らして考え、そして発信することの大切さが、よく伝わる発表だったと思います。
平嶋ゆきさんは、「満足度UPで外国人旅行者6,000人を実現しよう」と題してポスターセッションを行いました。この発表にもスウェーデンとフィンランドでのフィールドワークで学んだことが生かされています。平嶋さんのポスターでは、使用する色も聞き手の反応を考えて吟味されていました。また、中心となるポスターに加えて、強調点をクローズアップした補助資料の掲示も工夫点です。「QRコードを多言語対応に」というメッセージが次の企業の方々の発表テーマに結びつくものでもあり、続いて話された方々が発表内容を随所で引用してくださり、この点でも場にふさわしいテーマ選びであったと感じています。
質疑応答の時間には、二人ともたくさんの質問やアドバイスをいただけ、活発で和やかなやり取りを通して学びが深まったのも、うれしいことでした。二人の発表内容と発表する姿から、広島女学院大学の学びの特色が、聞いてくださった方々に伝わったと実感しています。また、他の方の発表に対して積極的に質問もでき、自由閲覧の時間には多くの企業人の方々と交流できたのも大きな収穫でした。
発表に慣れた他大学の上級生と名前をよく知っている企業で活躍されている方々、そして経験豊富な有識者に囲まれての発表とあって、たいへん緊張し、発表まではどきどきで、また食事もあまり食べられなかったようですが、二人ともそんなことを感じさせない立派な発表でした。難しい質問にも間を置くこともなく即時に答えていたことも印象的です。聞いてくださった方々からのうれしい評価と励ましの声もいただいています。同時に、洗練された内容の各企業のポスターや上級生の流暢な発表から、学内の井の中の蛙にとどまらず、学外に出て刺激を受けることの大切さにも気づかされ、授業での発表がよくできたと自己満足していてはいけないと痛感したそうです。チャンスを生かし、実の場での発信に自ら取り組んでこその貴重な気づきです。
テクニカルコミュニケーター協会会長の綿井雅康先生は、講評で、学生発表を評価してくださった後で、次のようにおっしゃいました。「聞くというのは、受け入れることではなく、聞き手が自分の頭の中にストーリーを作ること。聞き手にどんなストーリー(作文)を作らせたいのかを意識して発表しないといけない。何を聞き手に残したいのかを考えて話すことが大切。よく分かっている人の説明が、実はいちばん分からない。9割9分は捨てて、整理して再構成して話さないと伝わらない。あれもしゃべりたい、これもしゃべりたいという気持をおさえて、逆算して聞き手に何を残したいかから構成を考えること。時系列そのままに話したりするのではなく、まず結論から、あるいは大事な事柄から、また、まず聞き手をつかんでから細部に入るなどの工夫が必要。」-聞くという行為の本質をふまえたこの貴重なアドバイスを、今後に生かしたいと思います。
心配された台風の影響もなく、充実したセッションは盛会のうちに終了しました。会場を出ると、吹く風が心地よく感じられる、京の秋の夕暮れでした。 二人の発表と京都でのセッションで学んだことは、授業でもシェアし、他の学生のみなさんにも伝え、共有し、共に学びを深めたいと考えています。また、さらに多くの学生のみなさんが、様々なチャンスをとらえて、このような実の場で積極的に発信し、力を伸ばしてほしいと願ってやみません。